全身麻酔の流れ (麻酔科医の心の声) 〜入室,導入編〜

本当に全く初めて麻酔に触れる研修医の皆さんへむけて、
ある典型的な全身麻酔の流れを麻酔科医の心の声で再現してみたいと思います。
*これはあくまでも一例です。

50歳 女性
身長 160cm 体重60kg
子宮筋腫
腹腔鏡下子宮全摘術
麻酔方法 全身麻酔
既往歴 特になし

入室前
患者さんの情報を確認。麻酔器のリークもない。
セボフルレンも満タンだ。
挿管チューブのカフや喉頭鏡の電気も確認しておこう。
薬剤はオーダー通りシリンジに吸ってある。
部屋は十分暖かいな。

入室
患者が入ってきた。やはり緊張しているようだな。
声をかけよう。
「こんにちは。昨日術前診察でお会いしました⚫︎⚫︎です。
今日はよろしくお願いします。がんばりましょう」
Nsはモニターをつけ始めたな。SpO2 は99% 問題なさそう。
酸素マスクを当てよう。
「お顔の前に酸素が出てくるマスクを当てますので
ゆっくり呼吸していてくださいね。」
点滴の滴下は十分だな。点滴が漏れている様子もない。
血圧は160/90か。少し高めだな。HRも90台で上がっているし、緊張のせいだろう。

導入
準備は整った。導入に移ろう。
「少しずつ、痛み止めのお薬を入れていきますから、
ぼーっとする感じや、ほてる感じがあるかもしれません」
フェンタニル1Aを最初にいって、プロポフォールの血管痛を少しでも和らげよう。
アルチバもローディングのために少し多めの0.3γで開始しよう。
「何か変わった感じはありますか?」
少し、ぼーっとしてきたようだ。
麻薬が効きやすいかもしれないな。
そろそろプロポフォールを行こう。
「それでは、点滴から眠たくなるくすりが入っていきますから、だんだん眠くなりますよ」
「点滴が少ししみる感じがするかもしれませんが、
お薬の刺激です。心配ありませんからね」
「▲▲さーん」
まだ反応がある。少し待とう。
「▲▲さーーん」
反応なし。睫毛反射も消失している。マスク換気をしよう。
セボフルレンも1.5%で開始。
「お顔のところ少し触りますね。」
エスラックス(筋弛緩薬)を投与したあと、
APLバルブを20程度に合わせ、マスク換気開始。
換気はまだ少し重いが、問題なく換気できている。

あとは筋弛緩薬が効くのを待とう。

**約2分後**

換気も軽くなったし、筋弛緩は効いてきたようだ。
バイタルも血圧が少し下がったが大きな変動はない。
「挿管します」
開口は問題無い。喉頭鏡がが歯や唇を巻き込まないように
注意しながら優しく入れていこう。
喉頭蓋が見えた。少し上へ持ち上げると声門が見えた。
耳で聞いている限り、心拍数も大きな変動はない。
「挿管チューブください」
チューブは声門に入るまで目を離さず挿入。
深さは21cmにしよう。カフは5ml。
麻酔器に接続してまずは手動換気。チューブはくもっているし、モニタで呼気二酸化炭素も検出している。
食道挿管ではなさそうだ。
呼吸音を聞いて、片肺換気になっていないかを含めて確認。
よし、問題なさそうだ。
挿管チューブは口元でテープで止め、ずれないように。
機械換気に切り替えて、純酸素だったので空気を混ぜよう。
肺が悪いわけではないので、FiO240%程度で十分だろう。
アルチバはこのままだと多いので執刀前まで0.1γに下げておこう。
おっと、血圧が70台まで下がってしまった。
エフェドリンで昇圧しよう。
あとは、体温プローブを口から食道までいれて、目が乾燥しないよう目が閉じた状態でテープで止めておこう。
血圧も90台まで上がってきたし、
あとは麻酔記録が追いついていない分を書き込んで

執刀を待とう。

やれやれ、
まずは何事もなく導入できた。

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