全身麻酔で便失禁するのは本当に筋弛緩薬のせいなのか?!

先日、全身麻酔で筋弛緩薬を使用せずにLMA使用した手術で術後、患者さんが便失禁をしていました。
今まで、便失禁は筋弛緩薬のせいだと思っていましたので???となり、
その原因を検証してみました。

疑問

「全身麻酔で便失禁する際に、最も影響しているのは意識消失なのか、鎮静薬なのか、はたまた筋弛緩薬なのか??」

肛門のしくみ

まずは肛門の構造と、しくみについて理解を深めてみます。
肛門には内肛門括約筋と外肛門括約筋があります。
内肛門括約筋は平滑筋、外括約筋は骨格筋です。
この二つは仕組みがことなります。
ざっくり言うと、平滑筋は不随意(自分の意思では動かせない)のに対し、骨格筋は随意筋(自分の意思で動かせる)です。
通常意識がある時には、便が溜まって直腸が押し広げられると、その刺激で内肛門括約筋が弛緩し(不随意)、同時に刺激は大脳に伝わり便意を催します。便意を我慢する時には外肛門括約筋が収縮します(随意)。
便失禁はこの内肛門活躍筋と外肛門括約筋が両方とも弛緩した時に起こります。

骨格筋と平滑筋の支配

これを覚えておいた上で、骨格筋と平滑筋の生理について思い出しておきます。
骨格筋も平滑筋もアセチルコリン受容体を介した伝達により収縮するのは同じですが、受容体の種類が異なります。
平滑筋は副交感神経支配でアセチルコリン受容体の中のムスカリン受容体を介すのに対し、骨格筋はニコチン受容体を介します。
つまり受容体の種類がちょっと違うのです。
ここまでの知識で全身麻酔のそれぞれの要素の影響を見てみると、

意識消失の影響

意識によって動かせるのは骨格筋である外肛門括約筋です。意識がある時には便意を我慢して肛門を締めることができますが、意識がないと収縮しろという指令が働かないために収縮しません。

 

鎮静薬の影響

全身麻酔の鎮静薬には副交感神経を優位にし、平滑筋を緩ませる作用があります。(血管平滑筋の弛緩、下部食道括約筋の弛緩など)。これは副交感神経を介してムスカリン受容体が刺激された結果です。この影響で平滑筋である内肛門括約筋は弛緩することが予想されます。

筋弛緩薬の影響

筋弛緩薬はムスカリン受容体に影響することはなく、ニコチン受容体のみの拮抗薬ですので骨格筋の収縮を妨げます。なので骨格筋である外肛門括約筋は収縮できなくなりますが、平滑筋である内肛門括約筋に影響はありません。しかし、もともと外肛門括約筋に関しては意識消失によって収縮しなくなりますから、筋弛緩薬の影響は大きくないと思われます。

まとめ

内肛門括約筋の緩み ←鎮静薬
  +
外肛門括約筋の緩み ←意識消失+(筋弛緩薬も助長するか?)
  ||
 便失禁
となり、おもに全身麻酔による便失禁は意識消失と鎮静薬による影響が大きく、筋弛緩薬を投与しなくても十分起こりうることがわかりました。

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