抗利尿ホルモンのバソプレシン。
カテコラミンではないのに、とーっても強力な血圧収縮作用があるんだそうで、ACLSガイドラインや、敗血症性ショックガイドラインでちらほら見かけるようになりました。
それでも、もちろん他のカテコラミン(ノルアドレナリンとか、蘇生ならアドレナリン)が効かなかった時の「最終兵器」のイメージが強くありませんか?今回、ガチンコで
バソプレシン vs ノルアドレナリン
を比較した!という論文を読んでみました。
PMID: 27841822
アブストラクトの日本語訳
背景:vasoplegic症候群(血管麻痺)は、心臓手術後の一般的な合併症であり、患者の転帰に悪影響を与える。この研究の目的は、vasoplegic 症候群の患者の術後合併症の軽減において、バソプレシンがノルエピネフリンより優れているかどうかを評価することでした。
方法:この前向き無作為化二重盲検試験は、2012年1月から2014年3月の間、ブラジル、サンパウロのサンパウロ大学心臓研究所で実施された。vasoplegicショック(平均動脈圧が65mmHg未満、輸液チャレンジに抵抗性、CIが2.21/min2/m2と定義した。)の患者は心臓手術後の動脈圧を維持するためにバソプレッシン(0.01〜0.06U /分)またはノルエピネフリン(10〜60μg/分)を受けるように無作為化されていた。主要エンドポイントは、30日以内の死亡または重篤な合併症(脳卒中、48時間を超える機械換気の必要性、深部胸骨創感染、再手術、または急性腎不全)の発症であった。 結果:合計330人の患者が無作為化され、300人に治験薬(バソプレシン;149人、ノルエピネフリン;151人)が使用された。主要な結果は、バソプレッシン患者の32%およびノルエピネフリン患者の49%であった(非調整ハザード比、0.55; 95%CI、0.38-0.80; P = 0.0014)。有害事象に関して、著者らは、バソプレッシン群における心房細動の発生率が低く(63.8% vs 82.1%; P = 0.0004)、四肢の虚血、腸間膜虚血、低ナトリウム血症および心筋梗塞の割合における群間の差異がないことを発見した。 結論:著者らの結果は、バソプレッシンが心筋梗塞後心筋梗塞ショックの第一線の昇圧剤として使用でき、臨床転帰を改善することを示唆している。 |
ピトレシンの威力
なんということでしょう! 併用ではなく、単独の使用でこんな差が出るんですね!
個別の因子で有意差が差があったのが、心房細動発生率、腎機能障害発症率、ICU在室日数、入院日数でした。
えっ?腎機能にもいいの?私は、「バソプレシンて抗利尿ホルモンだし、利尿には不利だよね?」と考えていたのでこれには特に驚きました。
バソプレシンの作用機序
バソプレシン血圧上昇の機序や、腎機能への働きについてはこちらがわかりやすかったです。
今は、立ち位置がまだまだ微妙なバソプレシンですが、敗血症や心臓外科手術の低血圧に堂々の第一選択となる日も近いかもしれませんね。