セメントで血圧下がるのなんで?

整形外科の人工関節や、人工骨頭の手術では、

骨と人工関節をくっつけるのに、骨セメントを使います。

「セメントを入れると血圧下がることがあるから気をつけろよー」

と諸センパイ方から教えられてきましたが、

ふとしたきっかけで、その理由を説明できないことに気づかされました。

 

血圧低下は当初から指摘されていた

骨セメントに関連した血圧低下は、セメントを使った
術式がなされるようになった1970年代から指摘されていました。
術中死の頻度は0.06%と報告されているようです。
とくに心血管系リスクがある人で頻度が高いとされています。

 骨セメントによる血圧低下(BIS)

【原因】
セメントのポリマーが心拍出量を減少させることによって
血圧低下が起こる
その程度は、セメントの量に依存
【リスク】
高齢
骨粗鬆症
股関節手術歴なし
基礎疾患
【予防】
セメントをよく混ぜてから 入れること
十分な洗浄
ドレーンでの減圧
適度な容量負
【麻酔管理上の注意点】
セメント使用時には100%O2が望ましい
昇圧剤は、α、β両方に作用するエホチールが望ましい
代謝生アシドースが起こることがあるので注意
個人的には、なんとなーくセメントで末梢血管拡張とかが起きるのかなーと思っていたので、心拍出量が減るのが血圧低下の機序だった点が意外でした。
日本語の資料で参考になったのはこちら↓

Bone Cement Implantation Syndrome(BIS) – 松田病院

骨セメントを使わないセメントレス

実は、骨セメントを使用しないセメントレスという方法もあるそうです。
もちろんこの方法ならセメントによる血圧低下の心配はありませんが、

 今のところ

  • 早期のリハビリ
  • 骨折の危険
  • 長期成績

などを考えるとセメントを使う方法に軍配があがるようです。

参考文献)
血圧低下の度合いも結構個人差があるように思いますが、リスク因子などはあるのでしょうか??
これからもセメントとの上手なお付合いが必要なようです。

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