麻酔科的には、麻酔薬で患者の予後が変わるのか
みたいな議論はあって、硬膜外したほうがいいらしい!とか
麻酔で免疫が抑制されるらしい!とか部分的にはわかってきていました。
でもねー。そんなの気のせいじゃね?
悪いとこ(ガンとか)とるのがだいじっしょ´д` ;
とか思ってましたが、、
2016.1 anesthegiologyにこんな論文でてましたね!
PMID: 26556730
これは、衝撃受けた( ̄▽ ̄)/
全身麻酔には大きく分けると吸入麻酔薬を使うものと、
静脈麻酔のみで麻酔を行うもの(全静脈麻酔 total intravenous anesthesia:TIVA)の2種類あります。
TIVAで使うのは2014年の小児集中治療で死亡の原因とされ、
悪役にされたプロポフォールという麻酔薬です。
私は、PONV(術後悪心嘔吐)リスクが高いとか、
MEP(運動誘発電位:脳外科でこことっても大丈夫?の確認に使うやつ)するとか、
理由がないときの麻酔は吸入麻酔を使っていました。
この研究の概要は、過去の1万人以上のガン手術を行った患者を
対象にした後ろ向きコホート試験で、
吸入麻酔と静脈麻酔を行った患者の生存率を
4年くらいフォローしています。
すると、吸入麻酔で麻酔をして手術した人のほうが死亡率が高かったというのです!
下の、生存曲線を見てもらえば一目瞭然だと思います。
まず、手術によるストレスは免疫を抑制する上、がん臓器を切るときには細胞レベルでがん細胞が血流にばら撒かれることがわかっています。その上、吸入麻酔は、さらに免疫を抑制し、逆にがん細胞の活性化を助けてしまうらしいのです。反対に静脈麻酔薬はがんの活性化を抑えることが細胞レベルではわかっているらしいです。
この研究には、麻酔方法を麻酔科医の好みで選んでいてるとか、死因がわからないとか、ガン種による検討がされていないとか問題点はあり大規模な前向きRCTが待たれるところですが、こうもはっきりした結果が出てしまうと、焦ります。
麻酔方法で、癌患者の予後が変わる?!なら、TIVA使います。。はい。
今のところ麻酔の方法説明では、
吸入麻酔で行うか、静脈麻酔で行うかまでは選んでもらっていないし、
説明すらしていないところが多いのではないかと思います。
今後はそういった説明も必要になるのかもしれません。