今日はかなりマニアックです。
筋弛緩薬は、筋肉の収縮をできなくする薬で、
起きてる人間に普通に投与すると、呼吸ができなくなり窒息死します。
怖い薬ですね。´д` ;
手術中は患者が動いたり 反射で動くことがある 自発呼吸がでて人工呼吸器と同調しなかったりがないように追加投与をしていきます。
ただし、この追加投与の間隔は、手術によって、併用薬によって、はたまた麻酔科医によってまちまちです。
実際、追加投与を全然しなくても安全に手術を行える状況はいろいろあります。例えば硬膜外麻酔や、神経ブロックが効いている、レミフェンタニルを併用している、など。わたしもどちらかというと筋弛緩追加は頻回にしなくてもいいと思っていました。
PMID: 26945393
これは2016年Madicineの論文で72人を対象とした前向きランダム化試験で深い筋弛緩と中等度の筋弛緩で麻酔を維持した際の術後への影響を調べたものです。
ちなみに肩の痛みは横隔膜への刺激が原因で起こるとされています。
筋弛緩薬の効果が遷延する可能性
につきます。
スガマデクス (商品名;ブリディオン)
です。
ほとんど筋弛緩遷延の心配は無くなっています。
それでも、ブリディオンを使ったあと再挿管になったら筋弛緩薬が効かないんじゃないか?というお叱りもあろうかと思いますが、Cammuらの報告では ブリディオン4mg/kg投与の5分後にロクロニウムを1.2mg/kg投与すると平均3分で挿管可能 となっており必要十分なブリディオンの投与後の再挿管も可能ということがわかっています。
ということは、腹腔鏡手術においては筋弛緩薬をケチる理由はないのかもしれません。
術中高濃度の硬膜外麻酔持続を使用することで筋弛緩作用を得られるのではという考えもあるかと思います。これを直接検証した報告は見当たらなかったのですが、Lalらは硬膜外麻酔だけで腹腔鏡下の鼠径ヘルニア手術を行った報告で術後のかたの痛みが77%の人の出たと報告しています。おそらく、気腹の影響を硬膜外麻酔のみでとることは難しいと推測されます。
レミフェンタニルに関しては、根拠はないですがおそらく自発呼吸を抑制しているだけで筋弛緩をしているわけではないので筋弛緩薬の代わりにはならないのではないでしょうか。