ケタミン併用で麻酔が深く、覚醒が早くなる?!

麻酔薬の中の変わり者、ケタミンに新たなポテンシャル発見、かもしれません。

出典と資料

Anesthesiology. 2017 Mar;126(3):482-494. doi: 10.1097/ALN.0000000000001512. PMID: 28099246

アブストラクト英和訳シート

動画アニメーションによる解説

アブストラクト

背景:特定の脳領域および/または神経伝達物質を操作することによって興奮を促進することは最近の研究で注目されており、それは、全身麻酔からの回復を改善することを目標としている。現在の研究は、イソフルラン麻酔中のケタミンの少量投与が前頭前野皮質のコリン作動性緊張を高め、回復を加速するという仮説を検証した。

方法:成体雄ラットに、脳波電顕電極(前頭、頭頂および後頭皮質)および前頭前野皮質を標的とする微小透析ガイドカニューレを移植した。イソフルランで全身麻酔を確立した後、無作為に生理食塩水コントロールまたはケタミン注射を受けるように動物を割り当てた。薬物または生理食塩水投与の約90分後にイソフルランを中止した場合、麻酔からの回復を実験者および盲目化した観察者によって測定した。全実験中、電気生理学的シグナルを記録し、電気化学的検出を用いた高速液体クロマトグラフィーによりアセチルコリンを定量した。

結果:麻酔下ケタミンの単回投与は、バーストサプレッションの125%の増加をもたらした(イソフルラン単独: 37.48±24.11%, ケタミン注射後のイソフルラン:84.36±8.95%; P<0.0001)同時に覚醒時間を44%減少させた。(生理食塩水:877±335秒, ケタミン:494±108秒; P = 0.0005; n = 10)。さらに、ケタミンはイソフルランが中止された後の皮質アセチルコリン放出の有意な317%の増加を引き起こした(ケタミン注射後の平均:0.18±0.16pmol, 麻酔覚醒中:0.75±0.41pmol; P = 0.0002)。

結論:イソフルラン麻酔中のケタミンの投与麻酔深度を増加するが、一方で、おそらくコリン作動性機構を介して、意識の回復を逆説的に加速する。

ケタミンの歴史

ケタミンは麻酔薬として1962年に開発されましたが、幻覚作用があり、アメリカなどでは「スペシャルK」として違法に売買されてきた薬です。

そのため使用の規制が厳しくなり、アメリカでは1999年から、日本でも2007年から麻薬指定となっています。

ケタミンの特徴

他の多くの麻酔薬が、抑制系ニューロンの増強により麻酔効果を発揮するのに対し、ケタミンは興奮性ニューロンの抑制を機序とすると考えられており、ユニークな特徴を数多く持っています。

  • 強力な鎮痛効果
  • 健忘
  • 気管支拡張作用
  • 昇圧作用

ケタミンについて詳しく知りたい方はこちら

ケタミンに注目した理由

筆者らは、

睡眠の中で、rapid eye movementが起きるフェーズは、アセチルコリン作働性が高まって大脳皮質が活発になっており覚醒の準備段階として捉えられていること、

ケタミンはrapid eye movementを増やすことから

ケタミンは覚醒を促進するのではないかと仮説を立てたということです。(うーん。発想がさすが)

実験の概要

  1. ラットを対照群(生食を投与)と、ケタミン群に分け、
  2. 脳にいろんな電極とかを埋める手術をした後にイソフルランで全身麻酔し、
  3. 麻酔中にケタミン(または生食)を投与。
  4. そのあとイソフルラン投与を中止して覚醒までの経過を記録した。

結果

覚醒の早さ

結果は予想どおり、ケタミンの投与で覚醒時間がぐっと短くなることがわかりました。

同時に深い麻酔?

それだけではなく、さらにわかったことがありました。それは、ケタミン投与群の方が麻酔中に深麻酔の時に現れるBurst Suppressionが多く見られた、つまり、ケタミンを投与した方が深い麻酔状態だったということです。

イソフルランという麻酔薬に麻酔薬であるケタミンを併用したのだから、当然といえば当然かもしれませんが、深い麻酔と早い覚醒は一見“paradoxical”です。

考察

こういう結果となったのは、おそらくケタミンはイソフルランがある状態ではその覚醒促進作用を抑えられていて、イソルフランがなくなるとその覚醒促進効果を発揮するということなのだろうと考察されています。

大脳皮質のアセチルコリン量はその覚醒状態に関与しますが、下図のようにケタミン投与群では、イソフルランの存在下では対照群と同程度のアセチルコリン量なのに、イソフルランを中止してから急に増加しています


最近では手術室であまり見かけなくなってしまったケタミンですが、忙しい手術室の覚醒に一役買って名誉挽回となるかもしれませんね。

 

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。