麻酔科医師、麻薬自己投与で逮捕!楢原容疑者の素性は?麻酔科への影響は?

本当に多いですね。一度手を染めたら抜けられないものなのでしょう。麻薬管理の見直しが必要な一方でそれによって患者への不利益が起こらないか心配です。

病院で手術中に抜き取った麻酔薬を所持したとして、埼玉県警は20日、麻薬取締法違反(所持)の疑いで、群馬県太田市の医師、楢原創容疑者(36)を逮捕、さいたま地検へ送検したと発表した。「過去に20回くらい抜き取った」などと供述し、容疑を認めている。

逮捕・送検容疑は3日午後5時35分ごろ、埼玉県行田市の病院内で鎮痛効果がある麻酔薬のフェンタニルを含有する液体約6・6グラムを不法に所持したとしている。

県警によると、同日、同病院で70代男性の手術中、楢原容疑者が自分に麻酔薬を注射しているのを看護師が発見、院長が県警行田署に通報した。同署員が駆けつけると、楢原容疑者はショルダーバッグに注射器を所持しており、中の液体を鑑定した結果、フェンタニルを含有していた。

県警によると、楢原容疑者は医師紹介会社から紹介を受けて麻酔医として手術に立ち会った。同署員が駆けつけた際、楢原容疑者は意識がもうろうとした状態だった。「ストレス解消のためにやった」と供述しており、県警は同法違反(使用)の疑いでも捜査している。麻薬所持容疑で医師逮捕=手術中、自分に投与-埼玉県警

Yahoo!ニュースより

楢原 創 (ナラハラ ハジメ)容疑者について

プロフィール

36歳

麻酔科専門医

群馬大学医学部付属病院 集中治療部 所属
*現在はHPの名簿になし

経歴

2004年:群馬大学医学部卒業。群馬大学医学部付属病院で研修医として勤務。2006年 足利赤十字病院
2007年 済生会宇都宮病院
2009年 群馬大学医学部附属病院集中治療部、助教授に就任。

業績

日本語雑誌

  • 筆頭著者:7
  • 共著者:44

英語論文

  • 筆頭著者:2
  • 共著者:3

麻酔科専門医として大学病院集中治療室で勤務し、研究や臨床をこなしていたと思われる楢原容疑者。その「ストレス」とは一体なんだったのでしょう。

フェンタニル6.6gという量

フェンタニル製剤は0.1mg/2mlの製剤と0.25mg/5mlの製剤がありますが、通常手術室で採用されているのは、0.1mg/2mlが1アンプル(本)となった製剤です。

ニュース記事には「麻酔薬のフェンタニルを含有する液体約6・6グラムを不法に所持した」とされていますので、この楢原容疑者が所持していたのはこの製剤3アンプルとちょっと分の量と推察されます。

この量がどの程度かというと、

おそらく一気に静脈内投与すると呼吸抑制(呼吸が止まってしまう)がでる量だと思われます。

術後に持続投与するとすれば、痛みや体重にもよりますが、6時間分くらいでしょうか。

最近は他の持続投与用の麻薬であるレミフェンタニルや、硬膜外麻酔の併用などで、手術中に使用する量はあまり多くなく、小さな手術であれば1アンプル程度です。ですから、6.6gを一気にネコババするのは現実的ではないので、おそらく少しずつ貯めていたのではないでしょうか。

 

フェンタニルの管理について

通常手術室内では、フェンタニルは麻薬として厳重に管理されています。

鍵のかかった金庫に入れられ、その日に必要な分だけ看護師または薬剤師が患者名を書いた紙とともに各手術室へ配布します。

手術室内で使用した量は麻酔記録に正確に記入され、残量は看護師と確認の上返却されます。

ただし、ここで落とし穴なのは、投与して記録するのが麻酔科医一人であるということです。つまり、麻酔科医が患者に投与した量を偽って多めに記録に入力するとその差分をネコババすることは可能ということになってしまうのです。

もちろん、手術室内にはいつも看護師や外科医の目もありますし、我々も責任を持って管理しているのですが、悪意があれば不可能ではない状況があるかもしれません。


このような、問題が浮上するとやはり「麻酔科医個人に任せた管理」を是正する方向になっていくのは自然なことだと思いますが、手術中の薬の使用はその時々の瞬時の判断がとても大事な時があります。これが煩雑になって患者に不利益が及ばないように、私たち麻酔科医が自覚を持っていかなければならないのではないと思います。

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